第二話 「復讐」

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しかし、今言葉の刃を向けられているのは紛れもなく俺の方である。 「もう少し僕の楽しいお話に付き合ってください。占いからは少し離れますが、人間が死ぬ最期に残るものを言葉で表すとしたらなんだと思いますか?」 「……終焉とかかな」 スーツの胸ポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭う。 「いやいや、そんな立派な言葉じゃありませんよ。人が死ぬ前に残るのは『悪』です。例えば、病気で死んだ奴は体が悪かったから、犯罪を起こし死刑を宣告されて死んだ奴は悪いことをしたから、事故で死んだ奴は運が悪かったから、わかりますか全ての死に共通してあるものは悪。じゃああなたは一体どんな『悪』で死ぬんでしょうね」 悪、悪、悪、人は必ず正では終わらない、妙なロジックで俺に迫る。    答えられない。少年占い師の言葉一つ一つが俺の体にのしかかってくる。いつの間にか不気味な雰囲気でお香臭い店内に居ることを忘れていた。 少し、冷静にならなければ言葉という重圧に押し殺される。 「わかった、今までの行為は悪かったと思う。占いもこれで最後にしようと思う。だから、お願いだ。俺を幸せになる方法を教えてくれ!」 「やはり、あなたは頭が良い。でも、僕の忠告があったのにも関わらず、懲りないおじさんですね。それに僕は占い師ではなく、あなたがよく言うペテン師ですよ? それでも良いんですか?」 「構わない。俺の幸せへの道を示してくれ!」  子供相手に頭をさげる無様な大人。後輩の上司に頭を下げることに慣れているからこれくらいのことで俺のプライドは傷つかない。 「クレイジーですね。あなたがそこまで言うなら、幸せの道とやらを示しますよ」
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