1.この熱を感じられるだけでいい

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*** 私の勤める会社の毎朝の光景。 それは営業の朝会にいろんな製薬会社の営業の人たちが集まる光景だ。 大学を卒業してから5年半。 私は医薬品や栄養食品、医療機器などの医療系製品の卸売やコンサルティング業務を主に行うユズオカホールディングスのグループ企業であるユズサキ薬品株式会社で、営業事務の仕事をしている。 大学4年の春、人の役に立つ仕事をしたくて、医療系製品を取り扱うメーカーや、卸売りをしている会社の事務職を中心に就職活動を行っていた。 “ある理由”からこの土地から離れたくないという気持ちが強かった私は、地域に精通しているこの会社の採用試験を受け、無事に内定をもらうことができた。 うちの会社は医薬品及び医療機器卸売業を営んでおり、卸売業という業種柄、自社で開発・製造している製品というものは存在しない。 つまり販売している製品は、別会社である製薬会社や医療機器会社などのメーカーの製品となる。 入社して営業事務として配属された当初は受発注対応や伝票・請求書・見積等の作成、来客応対を行っていたけれど、入社丸5年が過ぎた今年の4月からは、営業のサポートをメインとする仕事を任されるようになった。 仕事内容は、医薬品の価格をまとめた薬価台帳や資料のファイリング作業、社内資料やお客さまへの提出資料の作成、電話応対など、営業をサポートする仕事だ。 依頼される作業はさまざまで、私にはまだまだ覚えることがたくさんだ。 私がサポートしているうちの会社の営業マンのことを、一般的にMS(マーケティング・スペシャリスト。医薬品卸販売担当者)と呼ぶ。 よく似た名前でMR(メディカル・レプレゼンタティブ。医薬情報担当者)という仕事もあるが、MRは製薬会社メーカーの営業マンのことであり、MSとMRは異なる職種である。 MSとMRは医薬品を世の中に普及する仕事をしているという点では同じだけど、具体的な仕事内容に違いがある。 MSは各製薬メーカーの医薬品の販売価格を決定する権利を持っており、病院や調剤薬局に営業販売・情報提供することが主な仕事。 それに対して、MRは自製薬メーカーの医薬品の効能などの情報や医療情報等を医者やMSに提供して、医薬品を世間に普及・拡大・フィードバックすることが主な仕事だ。
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