1.この熱を感じられるだけでいい

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あ、やっぱりお肉も食べたいかなぁ……。 お腹もすいてるし。 油っこくない……そう、鶏とか。 「あ、鶏肉なんかはどうです?」「鶏もいいかも……えっ?」 「あれ、かぶっちゃいましたね。くくっ」 私と杉浦くんの口から同時に発された「鶏」という言葉。 くすくすと可笑しそうに笑って運転を続ける杉浦くんの横顔を私は目をぱちくりとして見たけど、すぐに頬を緩ませていた。 こんな風に食べたいものの意見が合ったり、食の好みが合うことは私たちの間には頻繁にあることで。 同じことを考えていたんだと気付けば、いつも心がほっこりして嬉しい気持ちになる。 「今思い出したんですけど、行ってみたいと思ってた店があったんでした。宮崎の創作料理屋が最近できたみたいで、野菜は新鮮で鶏肉料理も品数多くて絶品らしいんです。さっぱりしたものもあると思うし、そこにしませんか?」 「わ、いいね。そこにしよう!」 「はい」 杉浦くんのおかげで、あっさりとご飯屋さんが決まる。 営業をしているからかわからないけど、杉浦くんはいろんなお店を知っている。 得意先の人によく教えてもらうのかもしれないし、自分で探すのが好きなのかもしれないし、……もしかしたら一緒に行くような相手がいるのかもしれない。 何が真実かはわからないけど、私は好きな人と食事をしながらおしゃべりできるだけで楽しいからそれだけでいい。 ……そう思うようにしている。
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