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黒光りしたハイヤーが
山小屋の前にやって来たのは
予定より1時間も後だった。
「仕方ないさ。地図にない場所だ」
自分に言い聞かせるように
九条さんはぼやきながら。
「さあ、行こう。シンデレラ」
上着を手に
寝間着みたいな格好の僕を促した。
夕暮れ時の終わり。
「どこへ?」
肩から上着をかけてもらっても
少し肌寒い。
「もちろん、お城の舞踏会だよ」
ハイヤーの後部座席に乗り込むと
九条さんは平然と言った。
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