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九条さんは壊れ物に触れるように
ふんわりと僕を抱いた。
「九条さん……」
「僕ら前世ではきっとこういう形で出会ってた」
生暖かい風の吹く
どこか懐かしいいい夜だった。
そのせいだ。
「来世でもきっとそうさ」
いささかロマンティック過ぎる。
それでも――。
「ここからは歩こうか?」
「ん……」
差し出される腕を取る僕の胸は
本物の乙女のようにドキドキと高鳴っていた。
「前世の僕はあなたと結婚して幸せな一生を終えたのかな」
少し前を歩く
栗色の髪。
「どうだろう。前世の僕は今みたいに君を大切にしたかな」
振り返りこれ以上ないほど優しく微笑む。
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