episode189 Take Me Higher ①

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九条さんは壊れ物に触れるように ふんわりと僕を抱いた。 「九条さん……」 「僕ら前世ではきっとこういう形で出会ってた」 生暖かい風の吹く どこか懐かしいいい夜だった。 そのせいだ。 「来世でもきっとそうさ」 いささかロマンティック過ぎる。 それでも――。 「ここからは歩こうか?」 「ん……」 差し出される腕を取る僕の胸は 本物の乙女のようにドキドキと高鳴っていた。 「前世の僕はあなたと結婚して幸せな一生を終えたのかな」 少し前を歩く 栗色の髪。 「どうだろう。前世の僕は今みたいに君を大切にしたかな」 振り返りこれ以上ないほど優しく微笑む。
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