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「どうして……?」
「もちろん僕が君を追いかけるのが好きなのと――」
朧な月光と
夜空に流れる雲を映した優美な瞳が
「もうひとつは君に切ない想いをさせたくないから」
ほんの一瞬
憂いある笑みを浮かべて細められる。
「なんてね」
僕の手を包み込む温かい手。
「九条さん……」
「いいんだ。冷えてきたから先を急ごう」
「――待って」
僕と出会ってからこの人が
どんな思いで過ごしてきたか
痛いほど分かる。
「和樹……?」
分かるから――。
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