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「今夜、完全にあなたの物になるよ」
物言わぬ
背中に抱きつき言った。
「前世も来世もない。あるのは今夜だけ――」
唇を噛みしめる。
苦しいのは誰のせいでもない。
「よせよ。ロマンティストは僕だけで十分だ……だろ?」
言い訳なんかしない。
だけど同意もしない。
「どうした?」
無言のまま首を横に振る
僕の顎先に触れ
九条さんは顔を上げさせた。
「僕は……」
僕は
泣いていた。
「あなたにあげたいんだ……」
一筋
二筋
涙が伝う度。
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