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「和樹……」
僕の中では
純粋な愛と同価値の
誘惑の花が――。
「今夜あげたいの。僕のすべて」
強烈な甘い香りを放ちながら
花開いてゆく。
「何もかもあなたに」
「何もかも……?」
涙を拭い僕は頷く。
ロマンチストとはまた少し違う。
「まだ君には見たことない顔が?」
「もちろんあるさ。誰にも見せたことのない顔」
道化の仮面は無限だ。
「だから今夜――すべてあなたに」
反対なんてできるもんか。
ましてやこの僕を拒絶なんて。
「行こう――」
次の瞬間。
九条さんが有無を言わせず僕の腕を引いた。
そうさここからがまた
誰も見たことのない
禁断の夜のはじまりだった。
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