第2章

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◇◇◇ 光輪(コウリン)。1日30時間の前半は炎陽、後半は月闇が支配し輝きを変える。 古よりアースでは50日毎に無月(ムゲツ)になる。無月とは光輪が無い日で、特別の力を宿す者が誕生するとか、稀有な現象が目撃されるとか、様々な出来事が言い伝えられてきた。 今宵は無月。吉兆とされる月鏡の輝きを愛でながら野望を胸に呟く者がいた。 「新たな主が誕生する。今度こそ、奴等を永久にアースから追放する時だ。」 光輪を司る虹色の龍がアースに降臨しなければ、抹消出来ない存在だ。 【アースを征服する者現れし時、異界より勇者現る】 イストの象徴であり、人族を治めている、東の王宮直属の神官が予言した。 一人の若き男性が、見慣れない服装で現れたのは、今から300年ほど前のことだ。 アースに来たことに憤りを感じていたという。恋人と生き別れた悲しみを反逆者討伐の源にして封印した勇者は、頭上に輝く光輪を太陽と月だと表現していた。 勇者は仲間たちと東から北へ。北から南へ。最終は西へ赴いた後に姿を消したという。 「昔、魔界の主である金龍がアースを支配するために、地界の銀龍を滅したと聞く。 地界を司る銀龍が本当に滅亡したならば、アースは崩壊しているはずが、今も均衡を保っている。 きっと、異界に逃れた銀龍が、異界の者と契りを交わした末裔、それとも銀龍自ら生存しているんだ。 その銀龍の力で、俺はアースに来れたんだと思うんだ。何れ扉の在りかが判明すれば、俺は元の世界へ還れる。 現在、成を潜めている魔界の主が目覚める時、異界からアースを救世する者が現れるだろう。 俺が鍵を残していく。 次に異界に訪れる者がいたら、必ず渡して欲しい。」 ◇◇◇
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