第2章

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清四郎のローブが強風に煽られるように、宙に揺れていた。 「本日から私がアスラン魔法騎士団の団長の任に就く加藤だ。昨日謀叛を企んだ隠密部隊と謂われた13班は、精鋭部隊12班により壊滅した。今後、班体制を改定予定だが現状維持で務めて貰いたい。」 よく通る声だ。カリスマ性は抜き出でている。みんな一身に耳を立てて聞いていた。 「来週、副ギルド長の訪問会談が開催され、国との連携も強化する予定だが、その仲介を任命する。今から名を呼ばれた者は前へ。 6班紫苑。12班アキ。」 (ええっ?どういうこと?) 「ふたりは魔力戦闘力共に高く安定している。後で別室で打ち合わせをする。」 隣の紫苑と一礼をした。 ◇◇◇ 別室に案内されて、紫苑とふたりで待機中。昨日の今日で何だか微妙な空気だ。お茶を淹れながら訊いてみる。 「紫苑は予想していたのですか?」 「ああ。モモカが6班に戻るからな。私は魔導師が来るまで派遣されていたんだ。 あと、同じ立場の者に敬語は不要だよ、アキ。」 にっこり微笑んだ紫苑に頷いてみせた。 「よろしく紫苑。」 「こちらこそ。」 そこへ清四郎と来た。用意したお茶を一気にごくごく飲み、大袈裟にため息をついた。 「ハァー。紫苑は王宮に戻るだけだろう?私は奴等に尋問せねばならぬわ。」 控えた清四郎の秘書がギョッとしたのは、紗季が淹れたお茶に警戒せずにいたからだと思う。 「毒など入ってないよ美晴(ミハル)。アキは藤原が認めた実力者だし、敵対するなら昨日から消息は掴めぬよう行方をくらませておるだろうよ。」 グッと堪える上司思いの秘書に好感を持った。 「さて。ヤンからの報告を受けたが、クウリウムの討伐後、原因追求はどこまで進展した?」 紫苑は下を向き、紗季は清四郎の瞳を見つめた。 「状況把握が曖昧でしたので、討伐時に発見した痕跡を、とある者に依頼してあります。」 「アキ!あの時何か見つかったのか?」 紫苑が叫ぶ勢いで言った。 一方、清四郎は顎を撫でるようなしぐさでニヤリと笑った。 「闇魔法を封じる珠か。見せてくれぬか?」 胸元に収めた珠を差し出した。 「本物だな。紫苑よ、アキに一から話して欲しい。」 神妙な面持ちで、紫苑が壮大な話を聞かせてくれた。
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