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誰もが何かしら苦しみを抱えている。それでも前を向いて耐えている。
負けてしまった隼人が弱いのだろうか。甘いのだろうか。
それくらいで、と言うのは簡単だ。
だけど………隼人は一人で苦しんできた。唯一助けになるはずだった兄弟の絆も希薄だったから慰めにはならなかった。
自分の胸だけに押し込めた苦悩は隼人の心を蝕んだ。
苦しみは隼人だけのものなんだ
残酷な呪縛に絡め捕られてじわじわと色を失い、希望の光の無い世界で生きながら死にゆく気持ち……
一線を越えてしまった隼人を責められるだろうか………
………修斗は何て言うだろう………
………修斗は………きっと………
私は答えを見つけられないまま隼人が抱えた重く粘っこい泥の中に沈んでいく。
「………お前が苦しんできたのは解る。お前を理解したつもりになっていた俺もお前を苦しめていた……済まない………だけどそれで修斗は納得するのか?お前の苦しみをぶつけられた修斗に何の罪がある?………修斗は………何故殺されなきゃならなかったんだ!?」
『……………』
「修斗を返せよっ!修斗をちひろに返してやれっ!!あいつを殺る前に何で俺を殺らなかったんだ!?」
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