6.前へ

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………陸が激怒していた………怒って………泣いていた……… 今まで一度も涙を見せたことの無い彼が、ポタポタと零れる涙を拭う事もなく、感情を剥き出しにして憤っていた。 私も泣いた。 そっと立ち上がり彼の頭を胸に抱く。 陸は俯いたまま身体を震わせていた。 「………陸……… ありがとう…………」 『……修斗が羨ましかった………お前が羨ましかった……みんなに頼られていつも周りに人が居た………人として格が違っていた………そんなお前と修斗は……ちひろを愛していた……そしてちひろも……………… オレは…無償の愛に腹を立てた………そんなもの、有るとは思えなかった………でも……一方で信じてみたい自分が居た。全てを投げ出してでもちひろを守り抜くって思いたかったんだ!…………オレは…………なってみたかった…………陸、お前になってみたかったんだよ!!』 ……やっぱり……… 隼人の気持ちを思うとやるせない。 どう足掻いてもみんなの中心には成れない人間は確かに居る。 自分を変えようと思い切って飛び込んでみても、いつの間にか誰もいなくなるか自然的に無視をされる。 人を惹き付ける魅力を持たない者はいくら努力をしようとも報われる事は無い。 どんなに望んでも叶わない願いはあるんだ。
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