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「ダメだよ小坂さん。こんなに並んで、みんな待ってるんだよ?客に普通も特別も無いっしょ?」
その瞬間、陸は並んでいた女性たちの心を鷲掴みにしてしまった。
彼女たちが心を奪われた溜め息を洩らし、私はそんな陸を笑う。
「いや、しかし……くさか…陸くんを待たせる訳には………」
「良いよ。その間イチャイチャしてるから。」
「り、陸っ!………………ね、今日はもう……」
周囲の視線にいたたまれない私は陸の袖を引いた。
「ん?良いの?……そんじゃ小坂さん、今日は帰るわ。ゴメンね。」
「も、申し訳ない!!」
「今度また。てか騒がしてごめん。並んでる人に不愉快な思いさせちゃった。皆さんにワイン出してあげて?………請求は親父に。しっかり付けといて!」
「すみません。お詫びは必ず!」
『ありがとうございまーす!!』
あたふたしながら頭を下げる小坂さんと、喜びながらも残念がる女性たちの声に送られて私たちはその場を離れ、結局地元の居酒屋に行った。
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