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ほうじ茶を出しながら彼を見詰めた。
私に全て話して欲しいと言った陸。私には彼から聞いていない事があった。
「…………」
「話して?陸が胸に仕舞っている苦しみを。私にも半分持たせて?」
暫く黙り込んでいた彼が溜め息を付いて口を開く。
「………奴等に囚われていた時……俺は毎日メモリーの行方について知っている事を言えと酷い暴行を受け続けていた。」
私は頷いて静かに腰を下ろした。
彼は自分の湯飲みをじっと見詰めながら言葉を絞り出す。
傷口に塩を塗り込むような苦渋に満ちた表情━━━
それでも彼は言ってくれる。
胸に溜め込んだ汚れた血を吐き出すように………
「奴等は狂ってる。人を殺すのを楽しんでいるんだ。それも一思いにじゃなくてじわじわと死んで行くのを見ることをね。
………隼人は遠巻きに静観してた。失望したよ。
散々痛め付けられて、ちひろを思い出しながらもう駄目だって何度も思った………
俺はずっと天井から両手を釣られていて自力で立っていることも出来なくてただぶら下がっているしかなかった…………
やがてやって来た坪井はナイフを持っていた。奴の目は血走ってて……俺は終わりだと悟った…………坪井はメモリーの在りかを他の奴等に聞かれたくなかったんだろうな。連中を追い払うと二人だけで訊問された、と言うか殺されかけた。
それでも俺が知らないと言うととうとうトドメを差そうとナイフを構えた……そしたら隼人が奴の背後から喉を掻き切ったんだ。
坪井が喉から血をゴボゴボ云わせながら噴き出して……死んだ………」
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