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ここは桜が咲き乱れる美しい国。
平和の象徴と呼ばれる小柄で美しい女王は、午前中の責務を終えて部屋へ戻る。
カーテンを開けて日の光を迎え入れ、お気に入りの紅茶を口にした。
暫しの休息を楽しんでいると、ドアをノックする音が耳に届く。
「レナちゃん、お待たせ!」
女王のレナに向かって気さくに話し掛ける人物は、国の政治を担う軍師サクラ。
軍師の一族と呼ばれる知略に秀でた家系の生まれで、祖父のソウマ、兄のトウマと共に、国中に名を馳せている。
大きな目をくりくりさせて元気いっぱいに挨拶するサクラは、清楚なレナとは違った雰囲気の可愛らしい印象だ。
「急に私を呼ぶなんて、どうしたの?」
「それが、東国の王様から書状が届いたの」
「リョウ様から?」
サクラは書状を受け取り、目を走らせた。
「軍師の一族の知恵が借りたいと書いてあるね。でも、詳細が書いて無い……手紙には書けない様な事を頼もうとしているのかな?」
「トウマさんは遠征中だし、ソウマさんは体調がすぐれないらしいの」
「おじいちゃんは歳だからね。一族の名を正式に継いだお兄ちゃんは、まだ南の国から帰ってないのか……仕方がない、私が行くよ」
「ごめんね、忙しいのに。すぐに護衛の兵士を用意するから」
「護衛なんていらないよ。一人の方が気楽だからね」
「でも、サクラちゃんはあの時……やっぱり駄目。お供の人は連れて行くべきだよ」
過去に何かあったのだろうか? レナは必要以上に心配をしている様だ。
「友好国へ行くだけだよ。心配いらないって」
お互いに一歩も引かない。
すると、どこからか声が聞こえた。
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