12日目:忘れていた感情

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「先輩は…綺麗に笑いますね」 「!?」 「なんか、そう思いました」 「ど、どうした…?」 真っ赤な顔してあたふたとする先輩を眺めて、少し笑った。 「あの、話変わるんですけど。先輩はあの女の人が、本当に渡辺先生を恨んでいるように見えましたか?」 「?…恨んでるから悪霊なんだろ?」 「そう、なんですけど…」 「うーん…迷ってるなら」 「それで何故俺のところに来る」 先輩に連れられてきたのは、小さな公園。 奥には砂場や滑り台があり、公園の前の入り口には、事故の目撃者を探す看板が立てかけてある。 「いやー、分かるかなー、と」 先輩の知り合いなのだろうか。 40代くらいの男性の声だけが聴こえる。 「あの、先輩…どこにいらっしゃるんですか?」 「オナゴ、お前に俺は見えんぞ」 「…?」 「いや、お前にも俺は見えん」 「声は、聞こえます」 「そこの交差点で轢かれてな。事故の際、霊に具現化できないほどめちゃくちゃに潰れたのさ」 耳を疑うような言葉だ。 腕の毛穴がビビって開き切った。
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