12日目:忘れていた感情

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「え、…と…」 「構うな。オナゴ、何か聞きたいコトがあるんだろう?」 これは… 渡辺先生のコトを話せと言うコトだろうか。 初対面。いや、対面してないけど。 初めて話す人に、何かを相談するなんてあり得ない。 あり得ないのに。 先輩の知り合いなら、信頼できるかもしれないとか思ってる自分がいる。 そんなの… なんか、反吐が出る。 信頼なんてしてたまるか。 頼るなんて糞食らえだ。 「柊」 「…っ!」 「人間ってさ…なんかこう。頼るコトも、強さだと思う」 とても柔らかい声音。 先輩はいつだってそうだ。 何かを溶かすような言葉を掛ける。 だから私もおかしくなるんだ。 「話してみろ」 それは酷く泣き出しそうな。 みっともなく泣き喚いてしまいたいような。 男性の声。 優しい。 優しすぎるんだ。 「違和感が…消え、なくて」 だからひどく。 縋りたい気分になってしまう。 どんどん弱くなってしまう。
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