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「どういう、ことだ…っ」
「娘さん…亡くなったんですか」
鎖の先にいる女が、がしゃんと鎖を揺らして反応した。
「……あぁ、まぁな」
淋し気に目線を落とし、普段威厳のある顔を曇らせた。
「先生の身体を、瘴気によって蝕んでいるのは、その娘さんです」
「…!あんた、どういうつもりよ!」
我慢できなくなったのか、鬼のような形相でこちらを睨んでくる。
「先生、聞かせてください。生前の娘さんのコトを」
「どういうつもりだ柊。何故娘が…香奈(かな)が、どうして俺を…」
やめてやめてと叫ぶ娘さんは香奈という名前か。
「淋しかったんでしょう」
「な、にを…」
必死に私の言葉をかき消そうとする香奈さんにそう声を掛ける。
「ずっと、淋しかったんでしょう。振り向いてほしくて、認めて、ほしかったんでしょう」
「香奈が、そこにいるのか?」
「えぇ、いますよ」
「っ…もう、やめてよ。何なのよ!!」
何から逃げているんですか。
何に、怯えているんですか。
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