13日目:遺した物とは

3/15
前へ
/576ページ
次へ
「どういう、ことだ…っ」 「娘さん…亡くなったんですか」 鎖の先にいる女が、がしゃんと鎖を揺らして反応した。 「……あぁ、まぁな」 淋し気に目線を落とし、普段威厳のある顔を曇らせた。 「先生の身体を、瘴気によって蝕んでいるのは、その娘さんです」 「…!あんた、どういうつもりよ!」 我慢できなくなったのか、鬼のような形相でこちらを睨んでくる。 「先生、聞かせてください。生前の娘さんのコトを」 「どういうつもりだ柊。何故娘が…香奈(かな)が、どうして俺を…」 やめてやめてと叫ぶ娘さんは香奈という名前か。 「淋しかったんでしょう」 「な、にを…」 必死に私の言葉をかき消そうとする香奈さんにそう声を掛ける。 「ずっと、淋しかったんでしょう。振り向いてほしくて、認めて、ほしかったんでしょう」 「香奈が、そこにいるのか?」 「えぇ、いますよ」 「っ…もう、やめてよ。何なのよ!!」 何から逃げているんですか。 何に、怯えているんですか。
/576ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加