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「な、んなのよ…あんたら!」
「さぁ、乗りかかった船ですから、乗っちゃったーみたいな」
「ほっといてよ!!」
「では何故泣くんです?」
「…っ!!」
発狂に近い香奈さんの声が止まる。
独り言を言っているようにみえる私を見て困惑している先生に、もう少し待ってくださいとアイコンタクトをする。
「わた、しは…要らなかったのよ。だからあの時だって…っ!」
あの時?
「先生、失礼ですが香奈さんの死因は?」
「轢き逃げ…だったらしい」
切な気に下を向き、奥歯を噛みしめるようにそう答えてくれる。
こんな顔をするのに、愛されてなかったのだろうか。
「あの時、というのは事故直後ですか?」
かしゃん、と鎖の音を立てて頷く香奈さん。
「何があったんですか」
おそらく、事故直後、香奈さんの中に爆発的な恨みや哀しみ、淋しさが生まれたんだ。
「電話、を…」
「電話?」
「かけたのよ。父さんに…」
ズレていたモノが少しずつはまっていく音がした。
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