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「結局、私は昔からいらなくて…。この人にとっては、”生徒”の方が大切だったのよ!!」
ポタポタと流れる涙は空気の中に消えて、より一層儚く、そしてとても哀れに見えた。
「先生、香奈さんの事故直後に電話はありましたか?」
「え?あ、あぁ。すぐ掛け直したけど、繋がらなくてな…」
ずっと…
すれ違っていたんだ。
こんな顔をするんだよ?
渡辺先生は、間違いなく、オトウサンの顔をしてるよ。
「”生徒想いの良い先生”というのが渡辺先生への印象だそうです」
「…?」
渡辺先生が不思議そうに首を傾げた。
鎖の向こうの香奈さんも、あがった息を整えながら私の言葉を聞こうとしている。
あれだけ逆上して、感情が動いていても人の話を聞けるのは、きっととても良い人だからだろう。
「では、渡辺先生はどうして生徒想いの良い先生を目指したんでしょう」
「…?そんなの、教員なら当たり前の感情じゃないの?」
香奈さんがポツリと呟くように、意見してくる。
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