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「それだけでしょうか」
「…?」
「”パパは先生してる時が、1番カッコ良いね”」
「……?…!!なっ!何でそれを柊が知ってる!」
少し恥ずかしそうに慌てる渡辺先生。
職員の情報はまず職員室から。
聴いてみればポンポンと出てくるものだ。
「昔、娘さんから……香奈さん、あなたか
ら言われた言葉だそうですよ」
見に覚えがないのか、困惑気味に香奈さんは先生を見た。
「教員というものは、仕事量のわりには給料はそんなに高くない。娘さんに少し淋しい思いをさせても、大学進学をさせてあげたかったなら、そりゃあ仕事に熱が入るでしょうね」
「…大学、しんが、く……?」
「父親らしく、大学の金は心配するなと言いたかったんでしょう?」
先生はベットに座ったまま顔を赤くしている。
「男っつーのはいつも不器用なんだよ。渡辺だってさ。意地もあったし、見栄もあったんだと思う」
後ろに立つ先輩がそう呟く。
「先生、聞かせてください。あなたの言葉を」
きっとそれが、鎖を壊す鍵となる。
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