13日目:遺した物とは

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大学を卒業し、何と無く教師になった。 「新任の、渡辺です」 桜華高校に就任して、2年が経った頃、他校の先生と結婚をした。 すぐに子供が生まれ、香奈と名付けた。 「ぱぱ!」 可愛かった。 可愛くて仕方がなかった。 しかし、香奈が生まれてしばらくすると、妻が夜泣きに耐えられないと離婚を迫ってきた。 教員で、子供を、人間を高め育てる者が何を言っているのか。 呆れ、そして教員という職に少なからず失望を覚えた。 「ぱぱー、ままは?」 香奈のその言葉がひどく痛む。 教員は安月給だ。 しかし、辞めて香奈を危険に晒すわけにもいかない。 香奈が5歳になる頃、俺は謝った。 「淋しい思いばかりさせてすまない」 保育園帰りに、ポツリと車の中で謝った。 どちらかというと懺悔に近いが。 「ぱぱは、せんせいなんでしょ?」 「そう、だな…」 「かなねー、せんせい大好きだよ?じゃあ、ぱぱは先生してる時が、1番カッコ良いね!」 屈託無く。 俺の迷いも全て溶かして、娘はそう笑った。
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