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その言葉だけを信じた。
せめてパパだけは、香奈の理想でありたい。
香奈ももう10年もすればこの子達くらいになる。
そう思うとひどく生徒達も愛しくなってきた。
言うコトはきかない、規則も守らない、問題児ばかりだ。
けど、一人ひとり想いがあり、人間なんだと向き合えば、理由があるんだと思えた。
「何で喧嘩ばかりする!」
教員として働き始め、香奈も高校に入学した頃、前代未聞と言って良いほどの問題児が入学してきた。
「あ、こら相坂!!」
相坂風舞。
こいつが来ると俺は毎回全校放送で呼び出され、喧嘩をとめて、訳を聞く。
「何でもねぇよ」
相坂は一度も喧嘩の理由を話さなかった。
自分がどれだけ怪我をしても。
相手を責めるコトも、相手が誰なのかさえも話さない。
「はぁ……どうして傷つけるコトしかできないんだっ」
そしてたぶん、俺は1番言ってはいけないコトを言った。
信じなかった。
信じてやれなかった。
大切な生徒を。
こいつはいつだって、誰かを助けていたのに。
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