13日目:遺した物とは

10/15
前へ
/576ページ
次へ
その言葉だけを信じた。 せめてパパだけは、香奈の理想でありたい。 香奈ももう10年もすればこの子達くらいになる。 そう思うとひどく生徒達も愛しくなってきた。 言うコトはきかない、規則も守らない、問題児ばかりだ。 けど、一人ひとり想いがあり、人間なんだと向き合えば、理由があるんだと思えた。 「何で喧嘩ばかりする!」 教員として働き始め、香奈も高校に入学した頃、前代未聞と言って良いほどの問題児が入学してきた。 「あ、こら相坂!!」 相坂風舞。 こいつが来ると俺は毎回全校放送で呼び出され、喧嘩をとめて、訳を聞く。 「何でもねぇよ」 相坂は一度も喧嘩の理由を話さなかった。 自分がどれだけ怪我をしても。 相手を責めるコトも、相手が誰なのかさえも話さない。 「はぁ……どうして傷つけるコトしかできないんだっ」 そしてたぶん、俺は1番言ってはいけないコトを言った。 信じなかった。 信じてやれなかった。 大切な生徒を。 こいつはいつだって、誰かを助けていたのに。
/576ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加