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「渡辺、先生…」
「ん?」
気弱そうな、男子生徒が生徒指導室に来た。
「あ、あのっ!相坂さんのコトで…」
「!なんだ、あいつまた何かしたのか!?」
ふるふると頭を振る生徒。
「ぼ、僕…サイフを、取られて。けど、相坂さんが助けてくれて。そ、そのコト話さずに…怒られたって聴いて」
頭を、何かでぶたれたような。
ぽっかりと、何か穴が空いたような。
「それを…言いたくて。相坂さんは悪くないんです!」
ぺこりと頭を下げて出て行ってしまう。
俺はそれを追うコトさえできなかった。
ずっと…
『またか相坂!!』
ずっと…
『やめろ!こっちへ来い!!』
ずっと…
信じて、やれなかった。
そして、あの時も。
「まったく。恥ずかしい」
ずっと俺を待っていてくれた香奈を、俺は見なかった。
見ていなかった。
「え、今…何て……?」
最後まで、俺は娘を信じなかった。
子供の言葉を、俺ら親が信じなくてどうする!
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