13日目:遺した物とは

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「渡辺、先生…」 「ん?」 気弱そうな、男子生徒が生徒指導室に来た。 「あ、あのっ!相坂さんのコトで…」 「!なんだ、あいつまた何かしたのか!?」 ふるふると頭を振る生徒。 「ぼ、僕…サイフを、取られて。けど、相坂さんが助けてくれて。そ、そのコト話さずに…怒られたって聴いて」 頭を、何かでぶたれたような。 ぽっかりと、何か穴が空いたような。 「それを…言いたくて。相坂さんは悪くないんです!」 ぺこりと頭を下げて出て行ってしまう。 俺はそれを追うコトさえできなかった。 ずっと… 『またか相坂!!』 ずっと… 『やめろ!こっちへ来い!!』 ずっと… 信じて、やれなかった。 そして、あの時も。 「まったく。恥ずかしい」 ずっと俺を待っていてくれた香奈を、俺は見なかった。 見ていなかった。 「え、今…何て……?」 最後まで、俺は娘を信じなかった。 子供の言葉を、俺ら親が信じなくてどうする!
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