誰にも言えない。

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 家が隣で、小さな頃からいつも一緒に学校に通っていた。  だから、一緒に居ることは特別で、限りのある時間なんだってことに気付けなかった。  朝一番の挨拶と、帰りのさようならの挨拶も欠かさずしていたのに。  中学に上がってクラスが別れてからは次第になくなってしまっていた。  2年生で私が生徒会長に選ばれてからは、全く。挨拶どころか、話をすることもなくなっていた。 「……い、」  最後に話をしたのはいつだったっけ。   「葉鳥先輩!」 「ふあい!?」  勢い良く立ち上がったせいでガタン、と大きな音を立てて座っていた椅子が倒れていく。  恐る恐る呼び掛けの主を辿れば、冷たい瞳とばちりと視線が合った。 「な、なあに……書記くん」 「また言われたことやってないんですね……いい加減副会長の雷落ちますよ」 「え、やだ手伝ってよ!」  嫌ですよ、と生意気な年下書記くんはさっさと自分の席へと戻っていく。  薄情なやつめ……。
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