誰にも言えない。

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「だいたい、何なんですか最近。生徒会選、そんなに不安なんですか」 「え?」 「だって最近よくその候補者リスト眺めてるじゃないですか。心配しなくても副会長が当選しますって」 「う、あ、うん、あは、うん」  思わず変な返事をしてしまった私を書記くんは胡散臭げな顔で半ば睨みつけるように見ている。  う……だって……叶太くんに副会長になって欲しいから他はどうでもよくてごにょごにょ。 「何です?」 「何でもない!」  会長の権限を大いに奮って当選させてあげられるなら当選させたい。  だけど、叶太くんはきっとそんなこと望んではいない。  昔のように叶太くんと話ができるチャンスを、逃したくはない。 「……けど、きっと鬼神くんには勝てない……」  副会長の鬼神 和虎(おにかみ かずとら)くんは、名前の通りの人だ。  鬼のようにとっても怖いけど、先生からの信頼も厚くて、厳しいけれど生徒や学校を思っての厳しさを頼りにしている生徒も多い。  そんな鬼神くんに知名度は0に等しい叶太くんが太刀打ちできるとは思えない。  ……名前負けしてる感もすごいし。  私が、叶太くんにしてあげられることって……何だろう。
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