誰にも言えない。

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◆◇◆◇◆  生徒会選をあさってに控えた水曜日。  私の日常は、目まぐるしく回っていた。  校内の巡回中に、さりげなく叶太くんをアピール。  先生に頼まれた書類作成の合間に、叶太くんのポスター作成。  鬼神くんの目を盗んで、叶太くんのポスター貼り。  一年以上生徒会長を務めているおかげか、私は全生徒に名前と顔を知られている。  その中で、秘密裏に事を進めるのはなんだか忍者やスパイにでもなった気になってとても楽しい。  誰も知らないこの秘密の行為は、もちろん叶太くん本人にも知らせてはいない。  だから、下駄箱前に貼られたポスターを首を傾げながら見つめている叶太くんを見たときは笑ってしまった。  こんな事しかできないけれど、もっと皆に叶太くんを知って欲しいの。  どれだけ優しいのか。どれだけ周りを想って行動してくれるか。真面目すぎるところも、全部全部知って欲しい。  ……そりゃあ、キリっと系の爽やかイケメンと騒がれる鬼神くんに比べたら叶太くんはひょろひょろだし前髪長いし全体的にもっさりしていて暗いけれど。  いいところはいっぱいあるし、鬼神くんと張り合う力を持ってる。……筈だ。 「その為には、写真でもアピールしていかなくちゃ……!」  今まで何度も挑戦したんだけど、地味さを増長させるだけだったり幽霊ぽくて怖かったりで上手く撮れないでいる。  私のスマホの画像フォルダはいつの間にか叶太くんでいっぱいになっているのに。一枚もまともなものが撮れてない。
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