誰にも言えない。

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「ちょ、っと待って、やだ、なにこれ、っ!?」  突然震えだしたスマホに、思わずカメラを落としそうになってしまった。  泣きそうになりながら通知を見ると、鬼神くんのアイコンが「定例会議なのにどこ行きやがった」と吠えていた。  ……。忘れてた。 「うあああああ……最っ悪……」  落雷確定。  どうしよう。どうにもならないけどどうしよう。  頭がパニックになって何をどうしたらいいのかわからなくなった。  すると、手からするりとカメラが滑り落ちていく。  ――あ。落ちちゃう。  茫然と動けずにいたら、地面に叩きつけられる直前にカメラはぴたりと動きを止めた。   「さっきから何やってるの夢ちゃん」  ひえっ。  目の前にいたのは、叶太くんだった。    以前より大きくなっている手でカメラを持ち、以前より高くなった背で私を見下ろしている。 「大丈夫?」と首を傾げる顔は前よりも男の子らしくなっているけれど、変わってはいない。相変わらず、優しそうな目をしている。
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