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隠し撮りという誰にも言えない私だけの秘密の日課を、当の本人に気付かれていただなんて恥ずかし過ぎる。
「夢ちゃん」
涙で滲む視界に叶太くんが映し出されたと同時に、ぱあっと世界が明るくなった。
「応援してくれてるの、すごく嬉しい」
「……っ」
いつも自信無さげに俯いていて、人見知りで視線を合わせてもくれない。
そんな叶太くんが見せた笑顔は何よりも輝いていて、誰よりもかっこよくて、……胸がぎゅっと苦しくなった。
「か、叶太くんならきっと大丈夫。……頑張ってね」
誰よりも応援してるから。
確かな思いを伝えて頷いた瞬間、スマホが激しく震え始めた。
……げ。
鬼から電話だ。
久しぶりに話ができて嬉しいけれど、行かなくちゃ。雷どころか命を取られかねない。
挨拶もそこそこに駆けだした私の背に叶太くんの声が投げかけられる。
「ありがとう」と。すごく嬉しそうな声に、私まで嬉しくなった。
知られてしまったのは恥ずかしいけれど、喜んでくれたのなら無駄ではないはず。
大きく手を振って叶太くんに答えて、生徒会室へと向かった。
応援はするけれど、もう写真は撮らない。
だってなんだか、独り占めしたくなっちゃったから。
叶太くんの笑顔は、誰にも秘密。
Fin.
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