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目が覚めるとすでに日は昇り、アキラとティーチが対峙していた。オイラの近くにはグリーンとピートの姿もある。という事はグリーンはオイラの伝言をティーチに伝えてくれたのだ。アキラは止められなかったが、これはまだ最悪ではない。それに、そんなオイラにピートが言った。
「やぁ、悩める少年。どうやらなかなかに頑張った様だね。100点ではないが、及第点って奴だ。なんといっても当初の目的だった人質として君を使わなかった事は大きい」
「えっ!?」
驚いた事に狙われていたのはティーチだけではなかったらしい。オイラはアキラの言う通り本当に鈍感な様だ。でも、ならばまさに決闘が始まろうとする今、オイラはここにいるのか?その疑問もピートが解いた。
「アキラは初め、そのつもりだったんだよ。まぁ、それがいつから変わったのかは分からないが、変えたのは君に間違いないだろう。私はティーチ君とも幾度か話したが、それこそが最悪の展開だった。君が人質になればティーチ君は本気で彼の相手をしたし、私は亡き友の息子を守らなくてはならなくなった。それだけは、避けられたのだからね」
ピートは落ち着いた顔でそう言った。そうか、オイラはこの男の事を本当に分かっていなかった様だ。一見ふざけた言動が目立つが、その真意は常に一本の筋道を通している。戦友であるブラウンの頼みを自分なりに果たすためにティーチを探り、オイラやアキラを導こうとしていたのだ。最後にアキラに魔法の秘密を教えたのも、きっと、それが彼の為になると思っての事なんだろう。
「畜生。大人はいっつも勝手だ」
オイラは心底そう思った。今回のピートといい、町長に騙されていた事をオイラに教えた時のティーチといい、皆して、見えない努力ばっかりして、子供が気付くのはいつも終わってからだ。そしてこう言うんだ。
「まぁいいじゃないか。子供は学ぶのが仕事なんだからさっ」
畜生、オイラも早く大人になりたい。こいつらみたいな格好いい大人に……。
しかし、そんな尊敬は長く続かない。全く予想していなかった可能性。ティーチの敗北の可能性が現れたからだ。
「ちょっと、ピートさん!!格好つけてる場合じゃないわよ!?」
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