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アキラの渾身の斬撃、その結果も分からぬ内にティーチに降り注ぐ大岩の数々、そして、仕上げと言わんばかりに空高くに持ち上げられたのは先までとは比べ物にならない巨大な岩。
「なんて大きさだ」
「アレはぶつけるなんて生易しい物じゃないわ。磨り潰すとか埋めるとか、そう言う規模よ」
ピートの感嘆をグリーンが補足する。いや、そんな補足いらない。見れば分かる。あれは心が読めてもどうしようもない。防御不能の一撃だ。
「ティーチ!!!」
オイラの叫びとアキラの巨石の落下は同時だった。巨大な衝撃音にかき消されながら、声の限り叫ぶ。オイラにはそれしか出来ない。衝撃の余波で身体が吹飛びそうになる。破片があちこちにぶつかって痛いけど、今はそれどころじゃない。やがて、砂埃が止み、ティーチがいた場所がオイラの目に映る。そして、安堵した。
「地の魔法を操るならば、一番に着眼すべきはその硬度だ」
ティーチの声、そして姿。ティーチは半透明に輝く鉱石の壁の後ろから姿を見せていた。
「アキラの勉強不足と、視野の未熟さだな」
ピートが言った。その表情はさっきと変わらない運動会の我が子を見る顔だ。コイツ……全部分かってたんじゃないだろうか?正直、やっぱりこの男は好きになれない。
「前言通り、土の突出した利点は硬度だ。それを攻撃にしか考えなかった事、物質の変換にまで頭が回らなかった事がアキラの勉強不足。そして」
ピートはニヤリと笑って言った。
「博物館は皆の物。当然、ティーチ君にも扱える。それがアキラの視野の狭さだ」
コイツ……本当にいい性格している。こんなに子供をからかって楽しいのか?それが大人なのか?おっと、そんな場合では無い。まだ、決着は付いていないのだから。しかし、前を見たオイラには、もう心配の必要が無い事が明らかな光景が浮かんでいた。
「くそー!!」
フラフラになりながらティーチに切りかかるアキラは簡単に避けられて転倒する。兵士の訓練を受けていたアキラにとはいえ、ブラウンの形見であるあの長剣は長時間扱える代物ではないらしい。しかし、それでもアキラは繰り返す。
「アキラは良くやったわ。でも、子供の力じゃこれが限界だわ」
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