アキラの戦い

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それはアキラも十分に理解していたし、オイラでも分かる。戦闘中でも、体重移動や加速を味方にする事で、なんとかティーチと張り合うだけの力を出していた。その技術には恐れいるが、体力や握力はそうはいかない。 「更に言えば、アキラはもう魔法も使えない」  そう、博物館にやってきた精霊の力は、先までの豪華な魔法のオンパレードで全て使い切ってしまっている。今のアキラに出来るのは手から砂を出す程度の魔法だけだ。だが、アキラは戦いをやめない。オイラにはリーディングなんて出来ないのに、何故かその気持ちが分かる気がした。アキラはもう、ブラウンの事だけで、ティーチへの憎しみだけで戦っているんじゃない。それならば彼は再挑戦の為、冷静にこの場を退くはずだ。それでも敵わない戦いを続ける理由。もし、オイラがアキラならと思うと、それは分かってしまう。アキラの戦う理由。それは……オイラだった。 「オイラが……終わらせないと」  ぼそりとそう言うとオイラはアキラに向かって歩き出す。満身創痍とはいえ、ろくに戦いも出来ないオイラが剣を振るう相手に近づくというのに、全く危険を感じなかった。いや、それさえもどうでも良かったのかもしれない。アキラはオイラのせいで戦い続けている。苦しみ続けている。親友の制止を裏切って始めた戦いの責任をとろうとしている。ピートが言った。責任を取るという言葉。多分それが大人と子供の境界なんだ。戦いを止められなかったこの未来にオイラは胸を張って責任を取れる覚悟が無い。もし、アキラとの日常が戻らない未来が訪れたらと考えると恐ろしくて仕方が無い。なのに、あいつはそれを承知で責任をとろうとしている。いや、責任じゃない。誰かに責を任された訳じゃない。あれは……決定した意思、決意だ。アキラはオイラの遠く及ばないところ、大人の世界に踏み入ろうとしている。 「あのバカ。なんでオイラを置いて大人になろうとしてやがんだ!どこまで……オイラを置いていけば気が済むんだ!!」
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