焦燥

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グリーンに勉強や武術を習って数日が経った。今日からはアキラに続いてクーも勉強会に参加している。母方の血だろうか?どこから聞きつけたのか、アキラが勉強会に参加しているのを知ったクーはすぐさまオイラに詰め寄った。 「お前……分かりやすいな。勉強は嫌いじゃなかったのか?」 「……気が変わったの」  オイラのからかいにクーは無表情に答えた。魂の抜けた様な恐ろしい顔だったが、今のオイラはそれ以上に愉悦が勝っていた。だって口論において絶対無敵の地位をもったあのクーが四面楚歌の敵地に足を踏み込んだのだ。オイラにこれを逃す手は無い。 「嘘だね……お前は気が変わる事だけはないだろ?勉強は今も嫌いだろ?」 「そうね……私はそういう人間だものね……」  面白かった。完全な勝ち戦……オイラは勿体ぶるのを辞めて最大の兵力をぶつける。 「だよな……お前の設定はよく分かってるもの……勉強嫌いは直るわけないよな……ただアキラが好……っへい!?」  オイラの最大兵力の一撃、クーは変化を好まない故に気が変わる事はなく、アキラへの好意が勉強嫌いに勝ったという信実は確定的な彼女の弱点であり、これを知るオイラは今、戦況においては勿論、腕力においても突破口を持たないクーにとって最強最悪の存在だと思っていた……のだが、それは彼女の返し手に難なく打ち消され、オイラは今、情けない言葉と共に地に伏せた。
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