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「あっ、私予習して来たのよ?国語って面白いわー!!ゼロ距離なら指一本で誰でも寝かせる事が出来るのよ……不眠症もびっくり!なんて道徳的かしら」
クーの指は目を凝らすと僅かに視認できる程度ながら電気を帯びている。甘かった。あの負けず嫌いなクーがオイラのからかいを計算して突破口を我策していないはずがなかったのだ。
「そんな道徳……あってたまる……かっ……」
オイラはその言葉を最後に気を失った。
クーは勉強が得意で、あまり手間のかからない優等生だった。そしてオイラとクーもアキラに勉強を教えてやったからか、アキラはなんとか理科、つまり土の魔法が生み出せる程度にはなった。かわりにオイラはアキラから武術を、クーは護身術を教わった。アキラは初め、間合いの取れる長い武器を学ぶべきだと言ったが、オイラにはどの武器も上手く扱うことが出来ず、最終的に以前手に入れた銃に風の魔法を集中することで放てる風弾の速射を基本にすることになった。はじめは風の魔法が使えるのに、それを銃に含める意味の分からなかったオイラだが、使ってみれば納得だ。まだ魔法を自在には扱えないオイラにとってそのままに扱う魔法のように散漫する事が防げる銃に詰められた風弾はオイラの風の魔法よりも数段扱いがよく、しかも実弾よりも弾切れがない事で優れていた。それから数日、オイラの風弾が上手く的に当たるまでに上達した頃、クーもまた電気の魔法を纏わせたおっかない拳打を習得していた。だがアキラはまだ、手の平から砂をサラサラさせていた。その頃からだったと思う。アキラの顔に陰りと焦りが見え始めていた。
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