焦燥

4/4
前へ
/36ページ
次へ
そして、その翌日、アキラはグリーンに言った。 「今すぐに、強力な、魔法を使う方法は無いのですか?実戦で活きるくらいの……」  ああ、そうだった。アキラはティーチと決闘をするんだったっけ……オイラは最近の三人の生活に満足して忘れかけていた。アキラは復讐者なのだ。そしてオイラはその中立にいる。オイラはどっちの味方になればいいんだろう。 「んーあるにはあるけど……」  グリーンは教える事を渋る。それは子供には早い。そう言っている様な渋りだった。 「簡単さ。描けばいいんだよ」  それを無視してピートが答える。額には7つの刺し傷。あぁ、あれからもう一週間も経つのか……それにしても痛々しい。 「描く?」 「そう。地面でもなんでもいい。魔法ってのは簡単に言えば勉強好きな精霊を掻き集めて自分の願いを叶えるってもんだ。自分の知性で呼べる精霊の数は限られるが、そこが精霊好みの博物館ならば、その魔法は飛躍的に高まるってわけさ」 「ピートさん!?」 「まぁ、言って分からん子供は自分で反省するしか無いさ」  相変わらず、気楽な返事のピートに頭を抱えるグリーン。頭が痛いのはむしろピートだろうが……。  それと、一つ思い出した。グリーンも戦い の時、何か地面に書いていた。数字やπとかいう記号があったり、数字の上に小さく数字が書かれてあったり、括弧がいっぱいで訳が分からなかったけど、膨大で整ったそれはまるで絵画の様だったが、あれで数学好きな水の精霊を集めたという事らしい。やっと意味が分かった。だが、それよりも今はアキラが気がかりだ。ティーチは多分、アキラを殺したりはしない。けど、アキラは殺す気だ。……ティーチはオイラの仇でもある?だが、殺したいと思った事は無かった。でも、ここでアキラとの関係を失う事なんて考えたくも無い。なんだか複雑な気分だったが、兎に角、この問題が解けるまで、オイラはアキラもティーチも失いたくは無かった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加