忠告

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 ピートはオイラに言った。どう動いてもいいが、動かなくてもいい。でも何をしても、納得しない結末がでたなら、あるいは納得のいく結末さえもそれはオイラの責任なのだと。そして、どちらの味方になる、ではなく、どちらの敵になるのかという言い方をした。確かに……オイラはまだまだ日和見な考えをしていた様だ。ティーチとアキラはこれから殺し合うのだ。ティーチはアキラを殺さない?だってアキラの義理の父は殺したじゃないか。いや、それ以前にティーチが殺さなくてもアキラとオイラの関係は変わってしまう。じゃあ、二人でティーチを倒したなら?それこそバカな話だ。あぁ、でもティーチはオイラの仇で、でも仲間で……とにかく、時間はもう僅かなんだ。きっとアキラはすでに準備を始めている。馬鹿がつくほどに真面目なあいつの事だからとんでもない量の元素記号やら何やらをどこかに書きたくっているに違いない。すでにオイラはどちらかの敵になる事を選ばなくてはいけなくなっている。友、仇、味方、敵、頭の中にそんな言葉がぐるぐると回る。そして、そのどれもが重要なのに、全てを掴む事は許されていない。何故ならば敵と味方はコインの表裏を同時に見る方法がない様に、一人の人間に敵と味方である事なんて出来るはずがない。つまり、絶対に何かを失う。もちろん、流れに任せて見守っても駄目だ。アキラの味方になっても駄目だし、ティーチの味方でも駄目だ。 「くそぉ……なんだよコレ、こんな戦い、起きなければいいのに……」  今にも泣きそうな声が自然と口から漏れた。 「!?」  そして、気付く。 「戦いが……起きなければいい?」  なんて、簡単な事か。なんで、気付かなかったのか!!これは計算問題の様に答えの有る問題じゃない。読解問題の様に肯定された答えのない問題。意図さえ正解すればいい。答えは人の数とまでは言わないまでも、無数にあったろう。事実、これまで、ティーチの味方になって、勝った上でアキラと和解するだの、アキラの味方のふりをして足を引っ張るだの、色々な方法を考えたが、読解問題としてすでにオイラは正解を踏んでいたんだ。
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