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「アキラ」
「パウロ……よくここが分かったね」
「お前は単純だからな」
「君はその分鈍感じゃないか」
小さく笑いながらアキラは言った。アキラらしい決闘の場所だった。そこは以前、ティーチとブラウンが戦った町のはずれ。アキラの国でも俺の住む町でもないその間に位置する場所だった。
「もう辞めないか?」
一瞬、驚いた様にアキラの顔が曇る。心のどこかで、オイラが味方になると思っていたのかもしれない。実際、そんな未来もあったかもしれない。でも、オイラはその未来に責任をとれなかった。アキラはオイラに向かって歩み寄りながら言った。
「パウロ……ゴメン、僕が町に来た目的は」
「知ってる。聞いてる。だからなんだ?お前言ったじゃん。今が楽しいって、オイラ達、友達だろ?なんでそれを自分から壊すんだよ!?」
アキラはもう、オイラの目の前にいた。夕日はもう完全に隠れている。
「すまない……パウロ。私は……」
わたし……その言葉が彼の決意を示していた。まるで、初めて会った時のアキラに戻った様だった。どこか無理をしていて、意固地なアキラ……今ならば分かる。彼にとっても、それは無理をして作っているアキラだ。ブラウンという義理の父に支配されたアキラの姿なんだ。そして、それ以上、オイラは話す事が出来なかった。アキラの拳が鳩尾を打っていたから。薄れる意識の中で、ピートの言った責任という言葉だけが思い出され、どうしようもなく……悔しかった。
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