文字化け

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フッフフフフ、ハハハハハ! 画面の向こうで困ってるカップルの顔が目に浮かぶ。 他人のスマホをハックして、任意のタイミングで文字化けするようにウイルスを仕込む。 いやはや、それをリアルタイムで見るなど、愉快な事この上ない。 大学を卒業して十年。 定職に就くどころか、ほとんど引きこもっている俺の最大の趣味にして、最高の娯楽。 当然の如く、人には言えない類いの秘密。 まぁ、個人情報を抜き取るわけでもなく、"文字化け"のみだから、ほとんど実害もない。 社会から見捨てられた、憐れな男の些細な悪戯。 でも、正直、これくらいでしか社会とも関わることもない。 全く、我ながら情けないものだが、今さらどうにもならない。 どこをどう間違えたのか。 完全に人の道を外れた行いを平然と行える俺は、もはや"人"ではないのかもしれない。 さて、十分笑ったしそろそろ今日は止めるか。 そう思い、パソコンの電源を落とそうとしたその時、通知が入った。 ーー新着メールを受信しました ん?珍しいな。 俺相手にメールを送るやつがいるなんて。 不思議に思いつつ、ちょっと嬉しくもある。 すぐに開けてみれば……。 『ア※♪※※※ア※♪※※※カ♪※※※※ガ※※※♪※ワ※※※※♪ナ※♪※※※サ※♪※※※ラ※※※※♪』 「なんだこりゃ?」 メールの本文は文字化けしているのか、訳のわからない内容。 悪戯かなにかか。 ウイルスが仕込まれていた訳でもないようで、俺はちょっとガッカリして、今度こそパソコンをシャットダウンした。
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