第二章 ボーダーライン

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 脱衣所に入ると宏輝はするすると衣服を脱ぎ始める。真っ黒なフード付きのパーカーに白のインナーシャツ。緩めのカーゴパンツにシンプルなボクサーパンツ。それに靴下まで取り払ってしまうと、宏輝を包むものは何もなくなった。  普段は慎ましやかで、人目を気にして生きている宏輝だが、将大の前では不思議と大胆でいられる。日に焼けない真っ白な素肌を曝け出して、宏輝は将大に笑いかける。 「どうしたのマサくん? 脱がないの?」 「あ、ああ……」  将大は宏輝に声をかけられるまで、衣服を脱ごうとはしなかった。慌てた様子でアウターを脱ぎ、着々と素肌をあらわにしていく。  宏輝とは違い、子供の頃からスポーツマンだった将大は、形のいい筋肉に覆われたスリムな体型をしている。すぐに赤くなり皮がはがれてしまう宏輝とは対照的に、ほどよく日にも焼けていて、同じ男としては羨ましい限りだ。  将大が脱ぎ終わるのを待って、宏輝は浴室に入る。湯船に湯を溜めている間、交互にシャワーを浴び、宏輝はスポンジで泡立てたボディーソープで将大の身体を洗っていく。腋の下や両胸の飾り、下肢にいたるまで、ごしごしと泡立てたが、将大は顕著な反応を示さない。  宏輝はそんな彼の反応を楽しみつつ、それから自分自身も洗い、ふたりで浴槽につかる。宏輝は将大の上に跨り、胸と胸とを密着させる体勢になって、ようやくふたりだけのムードが生み出される。  だが将大は、このわずかな間だけでも、自分から宏輝に触れることはできなかった。
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