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シャワーを浴び終えたふたりは、脱いだ衣服を再び身に着けることなくそのまま将大の寝室へと向かう。居間と続き間になっている四畳半ほどの狭い部屋だが、ふたりが横になるには充分だ。
宏輝が濡れた髪をタオルで拭っている間に、将大は一組の布団を敷く。長身の将大が手足を伸ばして寝られるように、両親が買い与えたものであった。
几帳面にシーツの皺を伸ばしている将大をタオルの下から覗き見た宏輝の心に、可愛らしいいたずらごころが宿る。生まれたままの姿で膝をつき、長い腕をめいっぱい使って丁寧に寝床を整える姿は、どこか滑稽だ。宏輝は将大の背後にそっと忍び寄り、髪を拭いていたタオルを将大の頭にがばりと被せた。
「うわっ……ひ、ヒロ?」
「ふふふ」
案の定、将大は普段の彼からは想像もつかないほど高い声を上げ、慌ててタオルを取り、後ろを振り返る。宏輝のいたずらは成功したのだ。
「マサくんかわいい」
「驚かせないでくれよ」
「怒った?」
「怒ってない。ああでも、また一から布団を整えないと」
将大は驚いた拍子で、せっかく整えたシーツをぐしゃぐしゃにしてしまったのだ。
「悪いなヒロ、すぐに直すか――」
宏輝は平常時よりも饒舌な幼馴染の両頬に手を添え、おしゃべりな口をふさいだ。
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