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「二年って、アンタ俺より先輩だったんですね。気づきませんでしたよ。っていまさら謝っても遅いか」
「なあ、もういいか? これから人に会う用事があるんだ」
「ああ、引き止めてしまってすみませんね。どうぞどうぞ」
「じゃあ――」
宏輝が踵を返そうとしたとき、背後から間宮が呼び止める。
「あ、待って先輩!」
「何?」
宏輝は早く彼の元へ行きたかった。宏輝の焦りに気づこうとしない間宮に対して苛立ちすら感じる。
「先輩のこと、これからはウッチー先輩って呼んでいいですか?」
「好きにしろ。もう僕はお前に会うつもりはない」
「ええ! そんなことは言わずに仲良くしましょうよ!」
「悪い、時間がないんだ。じゃあな」
宏輝は間宮から逃げるようにして、その場を立ち去る。間宮が発する仲良くしましょうというポジティブな気持ちが、いまの宏輝には煩わしかった。
間宮は眩しすぎて、宏輝には近づくことすら許されないような人種ではないのかと思わされる。駄目だ。自己嫌悪の海底から浮上できない。
「マサくん……どこ……?」
宏輝は震え声で彼の名を呼ぶ。彼はどこへ行ってしまったのだろう。
「マサくん……」
「宏輝!」
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