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背後から聞こえたのは彼の力強い声だった。宏輝は後ろを向いて彼の姿を探す。宏輝の待っていた相手、長谷川将大は肩で息を切らしてその場に立っていた。
「大丈夫なのか? 痛くはないか?」
「さっきの、見られちゃったんだ。恥ずかしいな」
「怪我はない?」
「ちょっと腰痛いけど、しばらくすれば治るよ。そんなに心配しないで」
「それならいいんだが……」
将大はまだ不安そうに宏輝を見下ろしている。心配性の将大のことだ。帰りにドラッグストアへ寄り、湿布を何点か調達するに違いない。不安げに右往左往する将大の姿を想像し、宏輝はひとりでクスクスと笑った。
「何だよ」
「ううん。マサくんが可愛いなあって思っただけだよ」
「俺なんかより、宏輝のほうが何倍も可愛い」
「ありがとう。そうだ、マサくん。おまじないしない?」
「ここでか?」
「だめ?」
「いや、駄目じゃないけど……お前はいいのか?」
「したい。マサくんとしたい」
「っ……わかったよ」
「ありがとう。じゃあこっち来て。あんまり人が来ないところがあるから――」
宏輝が将大を連れて来たのは二階へと通じる階段裏のスペースだ。人気がないとはいえ、完全に人が通らないとは限らない。
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