一時間目 ―隠れ鬼―

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「田中よ……焦るな、見苦しい。常に戦いとは非情なものだ。 既に戦いは始まっている。いくら俺たちが17年来の付き合いだからと言って気を抜くとは愚か。この時点でお前には頂点からの眺めを独占する権利は失われたと言っていいだろう……」 田中の発言により、かき乱された戦場は伊藤の発言により一瞬で凍りつく。 春の暖かさも感じさせぬほどだ。 そう……今この一瞬で寒冷化を実現させたのだ。 伊藤……やはり侮れぬ。 小学生の頃から算盤だけをひたすら究め続けた男。 決め台詞を言うたびに中指で眼鏡を上に上げる癖。 それはまさに瞬間冷却装置…… やつの数少ない発言にどれだけの人間が仕留められたか…… 無駄弾の無いライフル。 コレがやつの異名だ。
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