一時間目 ―隠れ鬼―

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「けっ! その台詞、戦いが終わった頃に全く反対の台詞、吐かせてやるぜ!」 そう言葉を吐き捨てた田中は不機嫌そうにポッケに手を突っ込む。 汚い緑色をした半ズボンは今に破れそうだ。 「まぁまぁ、田中君も伊藤君も仲良くしようよ!」 とうとう口を開いたか! 女神降臨である。 彼女の名は鈴木…… その声の高さ、色は全ての争いを鎮める。 ――小学6年クラス対抗ベースボール大会。 ひとつのデッドボールで両クラスほぼ全員での乱闘が発生した時のことである。 そのひとつのボールは開けてはならないパンドラの箱を開けてしまったのだ。 罵声、中傷、暴力…… この争いに終点など無いと誰もが思ったときのことであった。 奇跡は起きたのだ。 彼女の一言で全てが収まった。
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