パンダの需要

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放課後の教室には、既に先客がいた。 墨を塗ったように黒い髪が、肩に付かないラインで綺麗に切り揃えられている。 檸檬型の瞳が、僕を見た。 「榊君、?」 名前、知ってたのか。 少し驚いていると、間が空いたことをいぶかしむように、彼女は言った。 「いや、さかな君……?」 「俺は、あんな奇声を発したりはしない」 榊で合ってる、と言うと。 「そう、よかった」 よかった、の顔にはあまり見えなかったが。 人のことをとやかく言えるような顔ではないので、黙っていた。
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