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ビルとビルの間を縫ってここまで来る間にも、俺たちと同じ参加者をちらほら見かけた。右側に大通りを確認し、前進しながらふと思い出したように問う。
「そういや、あんた名前は?」
「私は、ナナミ」
「そっか。俺は――」
だが頭上で聞こえた音に気をとられ、喉元まで出かけた言葉を呑み込む。
なんだ?
何か、エンジン音のような……。
立ち止まり、ビル群の間に覗く空を見上げると、黒い機体がこっちに向かってやって来るのが分かった。
前に何かで見た覚えがある。あれは確か、ヘリだ。
その時、ポケットに入れていたスマートフォンが単発的な音で鳴る。
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