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「………ったく。なんだよ」 鋭い目つきで私を睨む圭吾さんは、携帯をポケットから面倒くさそうに取り出した。そして、画面を操作すると部屋は再び静寂に包まれた。さっきまで爽やかに笑顔を振りまいていた彼とは全く別人に見える。 「権藤先生の振りをして東雲さんを脅してたんですね。権藤先生は東雲さんの連絡先を知らないって言っていました。それに都市大病院を辞める時に以前使っていた携帯を解約させられ、新しい携帯を支給されたって東雲さんが言っていましたから…そうなんじゃないかと思っていたんです」 「そうだけど。権藤になりすましていたのは俺。だから何?」 腕を組み、顔を背けた圭吾さんは全く悪びれる様子はない。ただ、さっさと終わらせて帰りたい。そんな胸の内が態度に表れていた。 「どうしてですか?」 「…どうして?」 「圭吾さん、自分の研究が堀田に取られて悔しくなかったんですか?」 すると圭吾さんはクスリとほくそ笑んだ。 「悔しいも何も…あれは堀田教授に俺が差し出したんだよ。ボヤ騒ぎを起こしたのも俺。教授は日頃から鬱陶しいと感じていた細川先生を追い出すことに成功し、俺はほとぼりが冷めたら教授の元へ戻る予定だった。みかんちゃんのデータも、教授が欲しいって言ったから忍び込んで拝借した。センターの看護師をちょっと相手したら、何でも話してくれたから別に苦労しなかったけど」
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