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「…ならなぜ権藤先生を利用したんですか?」
さっきまで表情を一切崩さなかった圭吾さんの表情が微妙に歪んだ。
「権藤…ね。俺にとってアイツは邪魔者以外の何物でもなかった。それと、ゆず。お前もな」
冷たい視線が壁にもたれて腕を組むゆずの元へ飛んだ。ゆずは何も言わない。
「権藤は大病院の御曹司、というだけで何もしなくてもチヤホヤされていた。ゆず、お前は別に努力しなくても何でもすぐできるようになって…天才ってやつだよ。凡人の俺がどれだけ苦労して、努力したって、この二人以上に注目を浴びることはなかった。俺は…地位や名声が欲しい。だから堀田教授の一番弟子になるべく、あの人の言うことに全部、忠実に従って来たんだ」
「可哀想な人」
ふと口から出てしまった言葉。
だけど、正直な感想だった。
「は?何?俺のどこが可哀想なんだよ?!」
「たくさんの人を傷付けて、友人を騙して…それで得た地位に価値なんてあるんですか?」
「どんなことをしたって結局は力だ!腕が良くても名声が無ければその辺の凡人と何も変わらない!」
「……それは、お前の親父さんのことか?」
部屋に響いた声。ずっと黙っていたゆずが口にした親父さんというフレーズに圭吾さんは苦虫を噛み潰したような表情になった。
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