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圭吾さんのお父さん?
どういうことかわからなくて視線を送るとゆずはそのまま続けた。
「お前の実家、確か病院を経営していたよな?あんまりうまくいってないんだろ?」
「………あぁ、そうだよ。何の能力も技術もない平凡な医者が病院経営したって上手く行くはずないだろ?!他にどんどん新しい病院やクリニックができて、患者はどんどん少なくなって…。結局力なんだよ。力があれば金も手に入る。俺は早くその力が欲しかったんだ。そのためなら何だってした。どんな汚れ仕事でも教授のためにこなしてきたんだ!ゆず、お前にはわからないだろうな。俺の気持ちなんて…!」
「わかるはずないだろう!!!!」
ガタンという大きな音とともに壁に押し付けられた圭吾さん。胸ぐらをつかむゆずの手は震えていた。
「俺たちは医者だ。俺たちにとって本当に大切なものって、患者の命を救うってことなんじゃないのか?!」
「そんなの綺麗事だよ」
「そうだよ、綺麗事だよ!文句ばっか言っていうこと聞かない患者もいる。クソ医者って暴言吐かれたことだってある。忙しくて、毎日のように病院に呼び出されて患者対応。どんなけ手を尽くしても救えない命だってたくさんある。だけど、だけどな。俺たちは医者なんだよ。目の前にいる患者を救うことが使命なんだ。それ以上でもそれ以下でもない。評価がなんだよ。金がなんだよ、力がなんだよ…。そんなもので患者は救えるのか?」
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