恐怖のヨーグルト

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 品物は土曜の昼に届くようにした。本当にレビュー通りの効果が望めるなら、夕方以降ひとつふたつ食べておけば日曜の朝にはスッキリという寸法だ。 「見た目は普通のヨーグルトだ。が、なかなか強気の謳い文句を並べているな」  パッケージには最強乳酸菌だの腸内環境絶対改善だの、不当表示になりかねないコピーがバンバン印刷されていた。まあ、効果が追い付いていれば問題ないののかもしれない。 「――ん?」  そんな賑やかなコピーに紛れて、気になる注意書きがひとつ。 『1日1個以上摂取しないこと』  特定のビタミンを多く含む食品や飲料などででは時々目にする一文だ。ヨーグルトでそういった制限がよくあるものかどうかは、オレは知らないが――。 「今は効けば何でもいい。とにかく試してみるか」  控えめの夕食を終えた後、オレはそのヨーグルトをひとつ平らげた。 ※ 「なんて、なんて清々しい朝なんだ!」  翌朝。効果は抜群だった。  最近すっかりご無沙汰だった便意に起床を促されてトイレに駆け込むこと数分、まさに表示とレビューに偽りなしの劇的な効果があらわれ、これまでにない至高の排便がなされたのである。 「味も悪くないし、こんなことなら早く買っておけばよかったな」  オレがその効果に次いで驚いたのが味だった。舌触りなめらかで、やさしく、それでいて混ぜ物のない純粋なヨーグルトの酸味。さっぱりとした後味でありながらしっかりと余韻の残る、深い味わい。甘味についての認識を改めなければと考えてしまったほどだ。  ともあれオレは開放的な休日を過ごし、やがて夜を迎えた。 「スッキリした、とはいえ10日もそのままだったからな、一発ですべて解消されたとも思えない」  オレはまた夕食後にヨーグルトを手にすると、あっという間にふたつ食べてしまった。  ん? 「しまった、美味すぎて……!」  テーブルの上には、間違いなく空のカップがふたつ転がっている。 「……まあ、即座に異常をきたすものでもないだろう」  月曜から、ようやく悩みなく仕事に打ち込める。  オレはもう、そのことで胸がいっぱいになっていた。
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